近ごろ、テレビや本で『世界遺産』という言葉をよく耳にするようになりましたが、あなたはくわしく知っていますか?
僕も昔は「あ~世界遺産ね。なんかスゴイよね」ぐらいの知識でした。
今回は世界遺産について、知ったかぶりできるぐらいの知識を約5分で紹介します!
【追 記】
2019/01/20 『世界遺産に関する本』を追記
2023/01/08 世界遺産の件数を修正
世界遺産とは
世界遺産をざっくりと説明すると『後世に伝えるべき遺跡や自然』のことです。
世界遺産は次の3つに分類されます。
■自然遺産
国を越えた価値を持つ地形や生態系、絶滅の恐れのある動植物が対象
■文化遺産
国を越えた価値を持つ建築物や遺跡、景観などが対象
■複合遺産
自然遺産と文化遺産の両面において、価値を持つものが対象
世界遺産に登録された遺跡・場所には、次のような看板や石碑が建てられています。
ひし形+丸っぽいマークが世界遺産のロゴマークです。
なお、世界遺産の登録件数は年によって増減しますが、2022年時点では1154件です。
世界遺産関連の用語
自然遺産や文化遺産のほかに、世界遺産には次の分類・関連用語もあります。
負の世界遺産
近代に起こった戦争や人種差別など、人類が犯した過ちの歴史を忘れないように留める遺産です。
なお、正式にカテゴリー化(自然遺産とか文化遺産とか)されたものではありません。
【代表的な負の遺産】
・原爆ドーム(日本:広島)
・アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所(ポーランド)
危機遺産
登録された世界遺産のなかで、風化や環境破壊などの理由により遺産の価値を保つことが難しくなり、危機遺産リストに登録された遺産のことです。
文化的景観
文化的景観とは、自然と人間の活動の相互活動により生み出された景観のことです。
【代表的な文化的景観】
・紀伊山地の霊場と参詣道
・石見銀山遺跡
・西湖(中国:杭州)
・アマルフィ海岸(イタリア)
・ブルゴーニュのブドウ畑(フランス)
・コロンビアのコーヒーの産地(コロンビア)
トランスバウンダリー・サイト
トランスバウンダリー・サイト(Trans-boundary Site)とは、国境を超える世界遺産のことです。
2カ国にまたがることもあれば、5カ国以上にまたがる場合もあります。
【代表的なトランスバウンダリー・サイト】
・ル・コルビュジエの建築作品(アルゼンチン、インド、スイス、ドイツ、日本、フランス、ベルギー)
・シルクロード(中国、カザフスタン、キルギス)
・ビクトリアの滝(ザンビア、ジンバブエ)
シリアル・ノミネーション・サイト
シリアル・ノミネーション・サイト(Serial Nomination Site)とは地理的につながっていない物件が一つの遺産として登録される、連続性のある世界遺産の呼び方です。
文化や歴史的な背景、自然環境などが共通する資産を1つ1ずつではなく、全体として価値を認める形で登録された世界遺産です。
【代表的なシリアル・ノミネーション・サイト】
・長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産
・琉球王国のグスク及び関連遺産群
・アンコール遺跡群(カンボジア)
・アントニ・ガウディの建築物群(スペイン)
・イスタンブール歴史地域(トルコ)
・マカオ歴史地区(マカオ)
・シルクロード(中国、カザフスタン、キルギス)
・ル・コルビュジエの建築作品(アルゼンチン、インド、スイス、ドイツ、日本、フランス、ベルギー)
また、ユネスコの事業として、無形文化遺産や世界の記憶と呼ばれるものもあります(※これらは世界遺産ではありません)
無形文化遺産
世界遺産はカタチのある自然や建物を対象としているのに対し、無形文化遺産は民族文化などを対象としています。
【日本の無形文化遺産(一部のみ)】
・歌舞伎
・和食:日本の伝統的な食文化
・和紙:日本の手すき和紙技術(石州半紙、本美濃紙、細川紙)
世界の記憶
消失の危機にある文書や書物、記録物を保護する事業。文化のデータベース化を進めています。
【世界の記憶(一部のみ)】
・アンネの日記
・ベートーベンの第九交響曲の直筆楽譜
・山本作兵衛作の筑豊炭坑画
世界遺産が生まれたキッカケ
世界遺産が生まれるキッカケは、1931年に採択されたアテネ憲章。
第1回 歴史的記念建造物に関する建築家・技術者国際会議において、記念物や建造物、遺跡などの保存・修復に関する基本的な考え方を初めて明確に示しました。
その後、1945年に第二次世界大戦が終結すると、同じような戦争を起こさぬ平和な世界を築くための機関であるユネスコ(UNESCO:国際連合教育科学文化機関)が創設されました。
1960年になるとアスワン・ハイ・ダム建造にともない、アブ・シンベル神殿とイシス神殿が水没の危機に瀕しましたが、ユネスコの事業としてアブ・シンベル神殿を異なる場所に移築することに。
ひとつの国の遺産の救済に約50カ国の国々や民間団体、個人が協力したことで『人類共通の遺産』という理念が生まれ、この考えをもとにして1972年に世界遺産条約が採択されました。
1976年に世界遺産員会が発足、本格的に活動が開始され、1978年に初めての世界遺産12件が誕生しました。その世界遺産はこちらです!
- イエローストーン国立公園(アメリカ)
- シミエン国立公園(エチオピア)
- ナハニ国立公園(カナダ)
- ガラパゴス諸島(エクアドル)
- キトの市街(エクアドル)
- クラフクの歴史地区(ポーランド)
- アーヘンの大聖堂(ドイツ)
- ラリベラの岩の聖堂群(エチオピア)
- ヴィエリチカとボフニャの王立岩塩坑(ポーランド)
- ゴレ島(セネガル)
- メサ・ヴェルデ国立公園(アメリカ)
- ランス・オー・メドー国立歴史公園(カナダ)
世界遺産登録までの流れ
世界遺産は世界遺産委員会が適当に決めているのではありません。
世界遺産登録は次の流れで行われます。
1.各国が世界遺産登録したい遺産のリスト(暫定リスト)を作成
2.暫定リストの中から推薦する遺産を決定、登録推薦書にまとめる
*推薦する遺産は1年に1件
*世界遺産条約関係省庁連絡会議で推薦される遺産が決定される
3.各国から世界遺産センターに登録したい遺産を申請する
*世界遺産センターは世界遺産委員会を補佐するための組織です
*申請できるのは世界遺産条約を締結している国のみ
4.世界遺産センターが、関係機関に現地調査を依頼、評価報告書を受け取る
自然遺産の場合:IUCN(国際自然保護連合)
文化遺産の場合:ICOMOS(国際記念物遺跡会議)
5.世界遺産委員会で評価報告書をもとに、世界遺産リストへの登録を審議する
登録されるかどうかは『世界遺産条約履行のための作業指針』に記載されている10個の登録基準に(最低1つ)合致しているかどうかで判断されます。
*委員国の2/3以上の同意で可決される
登録推薦書を提出してから登録が決定するまで、だいたい1年半。日本国内での手続きを含めると数年間かかります。
日本の世界遺産
日本が世界遺産条約を締結したのが1992年。最初に世界遺産登録されたのが1993年です。
2021年1月現在、日本の世界遺産は23件。くわしくはWikipediaでご確認ください。
世界遺産の知識を問う資格
僕も現在勉強中ですが、世界遺産の知識を問う資格『世界遺産検定』があります。
世界遺産検定では世界遺産自体の知識のほかに、今回紹介した世界遺産登録の流れなどの知識も問われます。
世界遺産検定は4級~1級+マイスターの5段階あります。4級~2級は比較的カンタンなので、世界遺産について詳しく知りたい方にオススメです!
世界遺産に関する本
世界遺産に関する本は数多く出版されています。
世界遺産検定に関しての公式テキストもありますが、それ以外の本もいっぱい。
僕が読んでみて面白いと感じたのは、次の2冊です。
『旅の賢人たちがつくった世界遺産最強ナビ』は、旅人による世界遺産に関するコラムをまとめた感じの本です。堅苦しさはなく、とても読みやすいです。
『世界遺産100断面図鑑』は世界遺産の建物を縦にバッサリ切って、その構造などを詳しく紹介しています。日本の世界遺産もあるのでオススメです。
まとめ
世界遺産を知ることによって、さらに海外旅行が楽しく、かつ奥深さを知ることができます。
どの点が珍しいのか・優れているかもわかるので、まずは世界遺産検定を勉強してみましょう!